WISTORIA★TURISMO

   同人サークル「ウィストリア」「W TURISMO」活動案内  <2019年8月、Yahooブログから移転>                          赤以外の色字にはリンク色々いれてあります。ご参照ください。

『天地の祭典 岬の章』(2-1-8)

このシリーズはいつも勝手に話が決まっていくのですが、今回は表紙と4コマが全く決まらなくて発行がかなり遅れました。。。。間に『序』の再版があったといえ、『伃』からまたしても5年振り

 

『天地の祭典 岬の章』( 2-1-8 )A5判、44P、¥200

 四国最終章(多分)、愛媛は大洲~宇和~佐田岬肱川流域の「南予」が舞台。W的には「とっても住みたいアコガレの地」で、おそらくこのシリーズ中で最もマイナー(色々な意味で)なエリア。。。

 まず有名神が居らず、地元神(宇和津彦)には伝承が残っていないので、カワウソ神がゲストキャラという日本神話(獣神皆無)には有り得ない設定。ホウの主さまもやっとマトモに登場し、「獣の回」となりました。

げふっ

  そして今回のテーマは「言葉遊び」。Wはダジャレもアメリカンジョークも嫌いなのですが、なんだか勝手に決まっていくんですよ、会話が・・・ 

 

因みに作中の答えは―――

P13「このはしわたるべからず」
   答えはアレですが、渡る必要無いから「特に何もしない」もOK。
   「渡り箸」の解釈もあったのですが、答え難いので無視。

P20「まきがみ」
   早口言葉に意味はあまり無いのですが、基本は「巻き紙」。紙です。
   現代ではトイレットペーパーのこととも。

P43「食べられないけどかじって良いもの」
   知識、(良くは無いけど)親のスネ

 

*** ******* 作中解説 ***********

『伃』みたいに本筋以外のショートを入れようにも、その本筋が収まらなくて初めて40Pを越えてしまいました。「今月の神サマ」も入れられず・・・
ただでさえミッチリ紹介したかった南予(メッチャ好き!)。悔しいのでその分以上にこちらに作中解説をたっぷり載せました。リンクも沢山f:id:wistorian:20190926193526g:plain
この解説は他の天地既刊記事にも順次追加していきます。

 

 < 大洲 >

「大きな洲」という名のこのエリア。市内を貫通する肱川は全体的に狭い山間を縫って蛇行するのですが、下流域のこの大洲市街地周辺は広く平地になっていて、多分それで洲がたくさん出来たんでしょう。「大」ではなく「多」が本意ではないかと思います。「おおす」かと思って行ったら、現地で「オーズ」と聞いて「何か外国みたいだな」と(←ここから方向が「言葉遊び」へ)。大須(名古屋市)もそうだけど、発音的に中世の命名かと。

この大洲に何故か、ナムチ&少名彦の伝承がホロホロと残っておりまして・・・ 道後ならともかく、こんな冷鉱泉ばかりのエリアに何故??=>「通り道だった」という結論に。 

伊予国風土記逸文にこの二神の記事があるので、その派生かな~とは思いますが、少彦名はここで溺れたり死んじゃったりしてて、ナムチも後述するようにアレで、地元神と混ざってる感強め。W的にはちょっと、いや、かなりの注目エリアです。

ちなみに大洲城は鎌倉~戦国時代の伊予国の本城でした。現在の「伊予の中心」は温泉効果か松山市、「南予の中心都市」は伊達の威力か宇和島市に取って代わられましたが・・・・・・ 大洲は今も「伊予の小京都」と呼ばれ、「南予観光の中心」を担っております。

 

肱川ひじかわ

さて、この肱川。水源地から南に流れるのに最後は北に向かって海に出る不思議な流域具合(地図で辿ると「えええええ???」レベル)、広大なわりには標高差が500mととても小さく(=河床勾配は低い)、本来広々となるはずの河口が渓谷風(だから「おろし」が生じる)と、珍しい地形をしています。こりゃ水害も起こるわな。

途中に広い盆地が3つ(宇和町、野村町、大洲)あって、植生も魚も豊富。「日本三大鵜飼」でもあり、鮎は時の将軍に献上された逸品。

四国は「神」の伝説伝承が薄いのですが―――この周辺には妙に色々残っているので、この肱川が織り成す特異な地理的要因が1つの信仰文化圏を作っていたのではないかと思わせるほど。

川の上流域一帯は西予ジオパーク八幡浜市から四国カルストまで!)に認定されております。クラっ・・・  ←ジオたく

川の名の由来として「その鎌倉時代の築城時に人柱になった女性の名前がおヒジ」という伝説がありますが、まあ「あるある」ですね。。。「ひじ」は「比治」と書いて「豊かな泥土」のことを指す、というのが古代語の常識。

水害と言えば下書き終わった直後(2018年7月)でした、この肱川が豪雨で暴れて死者23人出したのは・・・・・・水害、2019年も多かった。

というか今に始まった話じゃなく、水害が起こりやすい地形をしている日本列島、中でも最も水害が起きやすい低地の平地わざわざ大勢住んでいるのが日本人。傍から見れば「災害受けるとわかっているのに定位置から動かない不思議な人たち」ですが、被災者のインタビューで驚いたのはほとんどの人が災害受けると思ってなかったって  ほざく  言うこと。。。

まあ、海外から見れば この「地震&火山大国ニホン」に住んでる時点でみな同類 です。この辺は次巻でちょっと書けたらイイな(無理)。

 

肱川おろし >

「局地風」の1つ。
最近は「けあらし」との関連か「肱川あらし」と呼ぶのが正式な模様。 

山間で生じて大洲に溜まった雲海が、霧となって狭い河口を海に向かい駆け抜ける冬の現象で、その風速はかなり強め。「肱川あらし予報会」なる団体があり、愛媛新聞とともにYouTubeたくさんの映像(0:51からどうぞ)を用意しています。

 

 

< 宇和津彦命 >
宇和島市に祀られる宇和津彦神社のご祭神がこの御方。

元々は「肱川の源流」である宇和町(現・西予市)に祀られていたという噂ですが、12世紀に現・宇和島城へ移され、17世紀の伊達藩の宇和島城下建設と同時に現在地へ遷座。「宇和島藩総鎮守」「南予一之宮」とも呼ばれる国史現在社であり、従五位下(885年2月『三代実録』)、旧県社です。

伊達藩のおかげで八つ鹿踊りという東北の特徴を兼ね備えてしまいましたが、本来は「宇和地方を開拓した地元神」。ですがその由来は全くややこしく・・・
まず、明治以前の社名は「一宮いっく神社」だったらしく、宇和津彦は後付けっぽい。

その宇和津彦も、『神社名鑑』では「宇和津彦とは宇和別の祖、景行天皇の皇子・国乳別命」となっています。その出典は『先代旧事本紀』(9C、偽書説アリ)らしく、『紀』では「国乳別皇子は水沼別(筑後宗像大社神職家)の始祖」「その弟は火国別(肥後・肥前)の始祖」(『記』には記載ナシ)。

「元宮地が宇和町」というのも確たる証拠が無く、宇和町小さい宇和津彦神社アリ)の方が言い張っているだけという可能性もあり・・・ 大体、「宇和の開拓神」なのに分社がここにしか無いって、穂高神社以上に「???」で。

しかもこの宇和町の宇和津彦神社」の現・祭神は、大国主なんですよ。。。

どちらにしても、住吉三神の一柱の「表筒男ウワツツオ」という名前と、豊後水道の愛媛寄り佐田岬以南を現在「宇和海」と呼ぶことから、彼は「海の長」ではないかと思います。元宮地が内陸の宇和町でも、です。

 

宇和町のある宇和盆地は、大洲と同じく「肱川流域に突如あらわれる盆地」で「南予最大の平地」。海への直線距離はとても近いのに海に出るルートが皆無という、閉じられた不思議エリアですが、リアス式海岸が連なるこのエリアにポツンと存在する内陸平地は古代から居住可能地として栄えていたようで、南予の大規模古墳は全て宇和町にあります。後代は通商で栄えたようで、宇和町の中心地「卯之町」重要伝統的建造物群保存地区となっています。

古墳ですが、南予最大(61m)にして最古の前方後円墳「小森古墳」も宇和町にあり、宇和町の宇和津彦神社」がある坂戸地区は古墳集中地区。八幡浜市との間には宇和海も九州も見渡せると言う笠置峠古墳(4C、H412m、なんと復元済!)があります。宇和町がH200mくらいのなので、標高差はほどほどですね。

ところが宇和島市との間には、肱川も曲がらざるを得なかった標高600m級の急峻な連なりがあります。宇和町坂戸から宇和島の港までの距離は直線で20kmと、八幡浜市の約2倍。八幡浜市の方は佐田岬の付け根という穏やかで便利な立地です。この地帯を治める王が海へ出る時の表玄関としてどちらを選んだかは、明白ではないでしょうか。

 

そして、宇和島市の宇和津彦神社」の相殿は高彦(792年に土佐国一之宮である土佐神社より勧請=宇和島城遷座前。「一宮いっく」はここから来てる?)&別殿の山王社だったナムチをわざわざ相殿配祀(1648年)という・・・・・・「一体どういうことなの?説明してちょうだい!!」状態。

ああ、もう、本当に・・・・・・なんで逸文しか残ってないんだ伊予国風土記!!! ←悶絶

 

ちなみに宇和島市の宇和津彦神社」の扁額は出雲国造尊孫たかひこ氏。四国を巡業したW最愛の尊福たかとみかと思ってウヒョーっとかけよったら、その祖父でビックリ停止。ええ?ウソ・・・ だって、尊孫たかひこ氏は四国へは来ていないはずなのに・・・ ハッf:id:wistorian:20190926193801p:plain

もしかして・・・まさかそんな・・・・・・祭神の「たかひこ」繋がりで揮毫を依頼した??

そんなこんなで今回の「言葉遊び」へと、強力に牽引されていったのです(終) 

 

< 言葉の利点 >

言葉遊びとは違いますが、神言や予言もそう、1つの言葉に複数の意味があったり、同じ予言でも受け取り方によって全く意味が変わってしまったり・・・・・・神話伝承に残る神のアレコレというのはそういう曖昧な表現を敢えて選んでいるフシがあります。

その言葉に態度が付くと更に惑わされやすくもなるし、受け手の心情次第でどうにでもなってしまう部分も多い―――言葉って便利だけど、結構アヤフヤなものなんですよね。それなら賞賛も罵声も常に話半分以下に聞いておけば良いだろうし、逆に仕事やトラブルの時には上手く使えばとても役に立つものでもあるわけで。

そういう意味では、言葉は学んでおいて人生に損の無いものです。こればかりは絵のついてしまっているマンガでは養えない部分なので、世間様の常識の中で「幼い頃から本をたくさん読んだ方が有利だ」という説にだけは(根拠のデータはウソくさいけど)完全同意いたしております。

 

< 速水の瀬戸 >
豊予海峡のことで、正式(?)には「速吸はやすい」の瀬戸(『紀』)。佐賀関の神も「早吸日女はやすいひめ」ですね・・・。でもWは風土記重視。漢字はどちらにも読める「速水」だろうとし、読みは「速見の湯」(別府温泉)から取って「はやみ」とします。

この瀬戸は潮流が速いために、引き締まった旨い海産物の宝庫となっていましてね。しかも同じ境遇の瀬戸内モノに比べれば、知名度の低さと大都市からの距離のおかげで超・安価。

でも、刺身でイケる佐賀関(大分県)の「関サバ・関アジ」は有名な地方ブランドです。同じものをより安価に味わえるのが、四国側・佐田岬「岬サバ・岬アジ」。あがる漁港(漁協)が違うだけなのに、このお得感!
宇和町 三瓶ミカメ「奥地アジ」もお試しあれ★

 

< ジャンケン >
現代に「日本の文化」として世界に広まっている「紙・石・鋏」の『ジャンケン』は、江戸時代後期の成立だそうです。
無視してやっちまおうかとも思いましたが、読者サマが間違った知識でどこぞでいつか恥をかかれてもアレなので(ねえよそんな機会)・・・・・・作中では中国由来の「数拳」に属する「球磨拳」にしました。

平安時代に記録のある「三すくみ拳」。その中で最も古い「虫拳」に比べれば「球磨拳」は単純明快、弥生時代からやっててもフシギではない。

「存在の証明」より「存在していない証明」の方が遥かに難しいという事実は、創作の大きな力となっています。

 

「球磨拳」は九州鹿児島の球磨エリアの風習。パー(5)に勝てるのはグー(0)。指を握れないカワウソ相手にチョキ(2)出す彼は、多分ルールを知らなかったのでしょうね。

 四国で有名なのは高知の「箸拳」。宴席で体験したのですが、めっちゃムズい・・・・・・いまだにルールが覚えられません。

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ここから4コマの解説

<カミナリ>

今回の原稿のために調べてびっくりしたことコーナー。

「雷」にしろ「稲妻」にしろ、これらは全て現象の名称で、その実態は「電気」と「光」と「音」。その中で害を及ぼすのは「電気」。
速さ順でいくと「光」≧「電気」>「音」。

私、何となく「電気」(電流)は「光」よりずっと遅いものだと思ってました。実際かなり遅いらしく、確か昔は「光と同じ速さのものは無い」と習ったはずなのですが・・・・・・今はとある性質(磁場の効力?)により「電気」も「光」と同じくらい速いとわかっているそうです。

きちんと習ったはずの「電気」「電圧(V)」「電力(W)」「電流(A)」などの単語をいつの間にか曖昧に使っていたことに改めて気づき、磁気(磁力・磁場)や電磁波との関係はもう、昔習ったかどうかすら忘却の彼方でイチから調べ直し。かろうじて、超伝導はあるが「超電磁(ヨーヨー)は無い」と覚えてたのに、これも「まだ、無い」だけで、今後開発されるかもしれないとは。。。 そしてニュートン力学ではもう世界は説明できなくて、今は「量子力学」がスターダムなんですって。

そう、歴史以上に、物理も変化(進化)していたのです。興味ないから気象関係(ミリバール撤廃)以外は全然でしたわf:id:wistorian:20190926193801p:plain

 

来年はアインシュタイン没後65年ということで色々物理の記事をみかけるようになりました。物理マンガもありますね(ドラマ化してる?!)。『天地』の下地に必要な知識なので、来年は物理にイマサラに親しんでみようかと思います。。。

 

< 絶縁体 >

「不電体」とも。でもどちらも電気を完全には絶てないし、不通にもできない。わずかな電気は必ず通ってしまう。ていうか、そもそも「電子」と「原子核」で成り立つのがこの世の物質―――「電気を通さない=物質ではない」ということに(幽霊?)

 「一番優れた絶縁体は空気」らしいので、やはり「囮対策が最も有効」ということになるでしょう。

 

< 避雷針 >

ところがこの「避雷針」。「絶縁体」と同じく「日本語イマイチ単語」の代表格です。そう、これも「言葉遊び」の一つ・・・・・・。

避雷針は「落雷の被害を避けるために設置する金属の棒」のことですが、これの実際の能力は「雷をわざと誘って自分に落とさせて、その電気を建物に干渉させず地面に流す」というもので、どちらかと言うと「受雷針」。しかし「受雷針」という商品が避雷針とは別に存在するので、更にややこしいことに・・・

能力を超える電流が一時的にでも流れれば地面に逃しきれず、オーバーフロー分以上が屋内(特に電源周辺)に打撃を与えるし、「保護角」(=保護範囲)も雷撃が侵入する方向によって異なるという、名称以上のイマイチ度。

瀬戸の潮流と同じく佐田岬に集中する「強風(マジ)」を利用すべく、この半島には軒並みドでかい風車が建てられています。そこに取り付けられている雷対策機器も、この「地面に流す系」で・・・・・・事故報告書を読む限り、やはり完全には雷被害を駆逐できていない模様。

本来の「雷を避ける」効能なら、「PDCE避雷針」(高価)がBESTのようです。

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こうやってどうでもイイことを調べているから、発行が遅れるんですね。

こんな感じで次巻もどうぞご期待ください。